これから100万円を仮想通貨に投資する場合、ビットコイン(BTC)とビットコインキャッシュ(BCH)、どちらに投資すべきなのでしょうか?
筆者の結論としてはBTCに投資すべきと考えていますが、一般的によく言われている両者への主張を鑑みながら、仮想通貨への投資戦略を検討します。
ビットコインとビットコインキャッシュのシステム上の違い
出典:Bitcoin Gold
ビットコイン(BTC)とビットコインキャッシュ(BCH)のシステム上の主な違いは、下記の2点です(上記の図の真ん中のビットコインゴールド(BTC)は、マイナーの寡占化を防ぐために、マイニングマシンがGPUとなっています)。
- BTCには「Segwit(セグウィット)」が導入されている
- ブロックサイズの大きさが違う(BTCは1MBに対して、BCHは8MB)
BTCは現在は1MBのブロックサイズが限界にきており、送金スピードが遅く、送金手数料も高くなってしまいました。そこで、「Segwit(セグウィット)」という新しい技術を導入することで、それらの問題を解決しようとしています。
将来的には、BTCは更に「ライトニングネットワーク」という技術を通じて、高速決済や少額決済なども実現しようとしていますが、それが実際に実現されて普及するのか不透明ではあります。
一方、BCHはブロックサイズを8MBに拡張したことで、2018年時点では送金スピードが早く、送金手数料も安いです。
ビットコインとビットコインキャッシュの性能の違い

上記の比較からしても、2018年時点ではビットコインキャッシュ(BCH)の方が性能は良くなっています。
また、ビットコインがデジタルゴールドと呼ばれ、価値の保存の手段として考えられているのに対して、ビットコインキャッシュは、世界中で使える未来のお金として、サポーターには捉えられています。
もし仮に、ビットコインが現状の金の市場規模(約7兆ドル)まで拡大し、ビットコインキャッシュが現状のお金の流通総額(約177兆ドル)まで拡大した場合、下記のような倍率となります。
BTCとBCHの今後のポテンシャル
- BTC:時価総額2500億ドル(2018年1月)×28倍=7兆ドル(金の市場規模)
- BCH:時価総額400億ドル(2018年1月)×4,425倍=177兆ドル(お金の流通総額)
こちらは簡単に言うと、BTCは現在の「1BTC=180万円程度」から30倍程度には伸びる可能性があり、BCHは現在の「1BCH=30万円程度」から4,425倍程度には伸びる可能性があるという主張です。
しかしながら、さすがにBCHが全てのお金の流通総額レベルに普及するかと言ったら、少々疑問は残ります。
ビットコインとビットコインキャッシュの将来価格は?

そこで、仮にBCHが「ドルの流通総額」の約1.5兆ドル程度にまでは伸びるだろうと、想定してみます。そうすると、現在から約40倍程度には伸びる可能性があるとは言えます。
こうしてBTCとBCHの将来価格を改めて予想すると、下記になります。
- 1BTC:約5,400万円
- 1BCH:約1,200万円(仮に世界のお金になった場合は約13.2億円)
この金額に到達するのがいつの日になるかは不明ですし、そもそも到達するのかどうかは不確実ではあります。
BTCとBCHの今後のポイント

今の所BCHには大きな問題が見つかっていませんが、BTCの場合はすでに送金の遅延や送金手数料の高騰という問題に直面しています。そのため、こののまま両者が順調に成長していくかは不確実なところではあります。
従って、BTCはライトニングネットワークなどの新しい技術の実現がポイントとなりますし、BCHはブロックサイズをあげたことによって何か新しい問題が起こらないかどうかがポイントとなり、両者のリスクには注意しておくべきでしょう。
このような背景から、BTCとBCHへの投資にあたっては下記のようなことが良く言われています。
ビットコインとビットコインキャッシュへ投資する際の注意点
- BTC派の意見:BTCには2008年からのマイングコスト分の価値があるが、BCHには2017年8月1日以降の分岐後の価値しかない
- 中立派の意見:BTCとBCHは同枚数保有しておいた方が良い
- BCH派の意見:BCHの価格はBTCを逆転する(2018年中)
以上の状況を踏まえて、ビットコインとビットコインキャッシュのどちらに投資するかを検討して見ても良いでしょう。
ビットコインとビットコインキャッシュの思想の違い
What do you care most about (if you have to choose one option only):
— Vinny Lingham (@VinnyLingham) 2017年12月24日
上記のBTCとBCHの哲学の違いを踏まえると、ビットコインコア派は「Censorship Resistance(対検閲性)」や「Decentralize(非中央集権)」という思想を重視していることがわかります。
しかしながら、実際のところ多くの仮想通貨のユーザーはそれらの思想を気にしておらず、中国系マイナーの寡占化に関しても、あまり気にしていないというところが実際のところです。
それよりも、一般的なユーザーにとっては、今後その仮想通貨の価格が上がるのかどうか?や、送金手数料が安くて便利なのかどうか?などの方に、もしかしたら関心があるのかもしれません。
ビットコインのマイナーの状況
出典:blockchain.info
2008年にNakamoto Satoshiによって発表されたビットコイン論文では、現在のような中国系マイナーの寡占状態を予想はしていなかったでしょう。
実際にビットコインのマイナーを確認してみると、5位のSlushPoolはチェコの企業ですが、Bitmain社、BTC.TOP、ViaBTCは中国企業です。また、Bitmain社はViaBTCに出資もしています。
更に、Bitmain社はマイニングに利用する「ASIC mining」というハードウェアを販売しており、マイナーがビットコインをマイニングするためには、このハードウェアが必要となります。
現在は中国のBitmain社の影響が強いが、今後は不透明
そのため、今のところビットコインは、かなりBitmain社の影響力が強い仮想通貨とは言えるのかもしれません。このような背景もあり、ビットコインコア派の開発者などは、このような中国企業による寡占状態を嫌悪しているようには見受けられます。
しかしながら、今後はSBIやGMO、DMMなどの日本の大手企業もビットコインのマイニングに参戦するため、このような寡占状態は今後変わる可能性もあります。
(2018年追記)韓国の大企業サムスンが、マイニングに利用するハードウェアの販売を開始すると表明しました。そのため、今後Bitmain社の独占状態は変わるかもしれません。
ビットコインキャッシュのマイナーの状況

一方、ビットコインキャッシュのマイナーに関しては、ビットコインと同じくBitmain社やViaBTC社などの中国系企業が多くのシェアを持っているものの、ロジャー・バーが運営する米国の「Bitcoin.com」も多くのシェアを持っています。
さらに、日本の大企業SBIとGMOインターネットグループも、ビットコインキャッシュのマイニングを表明しています。
そのため、将来的にはビットコインキャッシュのマイナーについては、中国企業の独占状態が無くなる可能性が高いと言えます。
こうして世界のGDPと比例して、米国・中国・日本・ヨーロッパなどの企業のマイナーが分散する形になると、ビットコインコア派からのビットコインキャッシュへの批判は消えていくのかもしれません。
仮想通貨のビットコインキャッシュ(BCH)誕生の経緯
出典:BitcoinCash
ビットコインキャッシュは2017年8月1日に新しく誕生した仮想通貨です。
誕生の経緯を簡単にお伝えすると、もともとビットコインにおけるブロックチェーンの「ブロックサイズ」は1メガバイト(MB)に制限されていました。
そのため、1MBよりも大きいブロックは「無効なもの」として自動的にネットワークから排除されてしまう(=ビットコインによる取引が承認されなくなってしまう)という、通称「スケーラビリティ問題」が以前より存在していました。
このスケーラビリティ問題を解決するために、ビットコインキャッシュはブロックサイズを「8MB」にして、ビットコインからフォークして誕生しました。
ビットコイン(BTC)とビットコインキャッシュ(BCH)の違い

基本的にビットコインキャッシュを支持する人々は、ビットコインキャッシュの方が承認時間が早く、コストもかからず、スケールする可能性も大きいとの意見です。
出典:BitcoinGold
ビットコインとビットコインキャッシュとの技術的な面の主な違いは、ブロックサイズとSegwitにあります。
ビットコインのブロックサイズが1Mであるのに対して、ビットコインキャッシュは8Mです。また、ビットコインには「Segwit」という技術が実装されています。
ビットコインに導入されたSegwit(セグウィット)とは?
Segwitとは「Segregated Witness」の短縮語で、ブロックサイズを圧縮する技術です。
トランザクション ID の算出対象からトランザクションに対する署名を削除し、トランザクションから独立した署名領域 (Witness) を用いて署名をおこなうことを指します。
Segwitに対応することにより 1 ブロックに含められるトランザクションが多くなります。また、署名に特別な細工を施した場合であってもトランザクション ID が変化することがなくなり、トランザクション展性を防止します。
出典:bitFlyer
ビットコインは、こちらのSegwitと合わせて「ライトニングネットワーク」という技術を利用し、高速や少額の決済をオフチェーンで将来的に実現しようと計画しています。
ビットコインキャッシュ(BCH)へのネガティブな口コミ
なお、インターネット上ではビットコインキャッシュに対してはネガティブな口コミの方が多く見受けられ、例えば以下のようなものがあります。
- ビットコインのコードを開発してきた優秀なデベロッパーがいない
- ビットコインのプロジェクトへの外部からの貢献者が期待できない
- (現状は)ビットコインよりもマイナーの報酬が少ないため、ビットコインキャッシュを採掘するインセンティブが無い
また、イーサリアムがハードフォーク(「Ethereum」と「Ether Classic」に分裂)した際とは異なるハードフォークの仕方と批判されてもいます。
— harand (@Andsvik) 2017年8月1日
つまり、ビットコインキャッシュのような方法で分裂してしまった場合、無限にビットコイン〇〇が生まれてしまうという点も指摘されています。
ビットコインキャッシュ(BCH)の今後の将来性は?

ここまで色々とビットコインキャッシュに関するネガティブな側面を見てきましたが、もちろんビットコインキャッシュに対してポジティブな口コミをする人々も存在します。
中国最大のマイナーであるBitmain社を運営するJihan Wuや、ビットコイン長者でありエバンジェリストのロジャー・バーなども、ビットコインキャッシュを支持しています。
ですが、それらはポジショントークとして捉えることもできますので、ここではビットコインキャッシュに関する将来性を検討するために、ビットコインキャッシュに関する事実を確認します。
① ビットコインキャッシュ(BCH)は詐欺コインでは無い
ビットコインキャッシュは、POSでもなければ、プレマインでもなく、公平に配布されたわけだから、詐欺的な要素はまったくない。
— 大石哲之 Tetsu [NO2X] (@bigstonebtc) 2017年9月29日
まず、そもそもの大前提として、ビットコインキャッシュは「詐欺コイン」ではありません。
ビットコインキャッシュは過大広告をしてICOを実施し、多額なお金を集めようとした仮想通貨などではないという事実は前提においておく必要があります。
② ビットコインキャッシュ(BCH)は多数の取引所が取り扱っている
続いて、ビットコインキャッシュを取り扱っている仮想通貨の取引所は、世界的にも多いという事実があります。
例えば日本の仮想通貨の取引所を確認してみますと、ビットコインの次に取り扱っている仮想通貨で一番多いのは「ビットコインキャッシュ」です。
時価総額が大きい「リップル」を大手取引所のbitFlyerは取り扱っていませんし、他にも時価総額が大きい「ライトコイン」を大手取引所Zaifは取り扱っていなかったりします。
ですが、それらのどの取引所も「ビットコインキャッシュ」は取り扱っています。
取り扱った理由は憶測するしかありませんが、そのような事実はありますので、「日本円からの資金流入の可能性が高くなる」とは言えるでしょう。
③ ビットコインキャッシュ(BCH)をマイニングする大企業が存在
続いてのポイントは、SBIグループやGMOインターネットグループがビットコインキャッシュをマイニングをしているという事実です。
こちらもどのような意図でマイニングしているのかは知る由もありませんが、ひとまずそのような事実があります。
ですので、この点を鑑みると「マイナーが採掘するインセンティブが無い」とは現時点では言いきれません。
また、実際に2017年10月時点での最新のビットコインキャッシュのマイニング状況を確認すると、正体不明のマイナーが40%以上存在します。
ビットコインキャッシュ(BCH)のマイニング状況

出典:coindaice
こちらに既にSBIグループが含まれているのかもしれませんし、今後GMOグループが表示される可能性もあるでしょう。
(追記)2018年にSBIのマイニングが確認されました。
ちなみに、上記の割合をみると中華系のマイナーが多いようには見えますが、ビットコインコアの最新4日間のマイニング状況を確認してみます。
ビットコイン(BTC)のマイニング状況
出典:blockchain.info
そうすると、上位のマイナーはビットコインコアとあまり面子が変わりません。
したがって、現時点ではビットコインキャッシュだけが「中国のマイナーに占有されているコイン」と言いきることはできないでしょう。
むしろ可能性としては、SBIグループやGMOグループがビットコインコアよりもシェアを取りにいっている可能性もあります。
④ ビットコインキャッシュ(BCH)は実際に使える場所がある
出典:The Accept Bitcoin Cash Initiative
続いてのポイントは、ビットコインキャッシュは、ビットコインと同じく実際に「使える」という特性がある点です。
例えば、ビットコインキャッシュの公式サイトを確認してみると、「Living room of satoshi」などが掲載されています。

Living room of satoshiはオーストラリアのサービスで、請求書を仮想通貨で払えたりします。また、日本では有名な銀座の沼津港や六本木のTwo Dogs Taproomなどで利用可能です。

まだまだビットコインキャッシュを実店舗で使える場所は少ないですが、一応はすでに使えるサービスや場所はあるという事実があります。
なぜこの「使える」という特性を取り上げたかというと、経済学上「①価値の尺度」「②価値の保存」「③交換の手段」という三つの特性がなければ、ビットコインキャッシュは「通貨」として成り立たないからです。
逆に言えば、それらを3つの特性を全て満たすことができれば、ビットコインキャッシュ は「通貨」として成り立ちます。
ですので、ビットコインキャッシュが「通貨」足りうるためには、実際に現実世界で使える必要があるのです。
Bitpayが遂にBCH対応を発表!!
今年中にビットペイVISAカードがBCHに対応し、来年初めにはペイメントプロセッサーも全対応。今ネット上で使えるBTC決済のほぼ全てがBCH決済可能に!https://t.co/0E6pSNMBBT— Pluton (@23pluton) 2017年12月16日
例えば、ビットコインに関しては、ビットフライヤーなどの大手取引所の取り組みによって、日本でもビックカメラやマルイ、メガネスーパーやHISなどの大企業でも利用が可能になっています。
ビットコインは、実際に現実世界で使えるインフラが整いつつあるのです。
将来的に「ビットコインキャッシュ」の利用が可能になる場所が、日本でも更に増えるのかどうかは分かりません。
ですが、すでにビットコインキャッシュを使える場所が出て来ているという事実は、念頭においておく必要はあるでしょう。
⑤ ビットコインキャッシュ(BCH)には半減期がある
最後に、ビットコインキャッシュには、ビットコインやライトコン、モナーコインなどと同じく、半減期があります。
これまでのそれらの仮想通貨の半減期の歴史を振り返ってみると、半減期前に大きく価格は上昇しています。
これは歴史的な事実ではありますが、将来も確実に上がるとは言い切れません。ですが、そのような事実があったということは、今後の判断材料にはなるでしょう。
ビットコインキャッシュ(BCH)への投資リスク

ビットコインキャッシュの推進者からは、ビットコインキャッシュはビットコインよりも早く支払いが可能で、手数料が安く、成長余地があり、開発に携わるチームも多いという主張もあります。
しかしながら、ブロックサイズを上げたことで、今後ビットコインキャッシュに何かしらの「リスク」が発生する可能性はあります。
また、ビットコインコアの技術革新(ライトニングネットワークの普及など)によって、ビットコインの方が、今後さらに成功し、ビットコインキャッシュが使われなくなる可能性はあります。
このようなリスクも踏まえた上で、ビットコインキャッシュへの投資は決めるべきでしょう。